ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十二話【新魔法の練習】
- 2021.02.07
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
目を閉じて深く呼吸をする湖張。全身の感覚を研ぎ澄まして魔法を放つ準備をする。
現在は修練場に入ってから4時間程が経過していた。
意外と早く戻って来たウンバボは、その場で気軽に食べられる様なパンと飲み物を持ってくるなり、二人に食事をさせた。
持ってきたパンの中にはハムととろけたチーズが入っており、満足感が得られるものであった。
パン自身にはほのかな甘みがあって、ついつい食事が進んでしまう。
また、不思議にもウンバボの作った料理を食べると元気が湧いてくる気がする。
ひょっとしたら料理自身にも元気になる魔法を掛けているのかもしれない。
食事をする際には、その場で座れるように敷物も用意してくれて至れり尽くせりであった。
食事が終わるなり、湖張はすぐさま魔法の練習の続きを再開する。
何度かウンバボにやり方のコツを聞くものの、どうも上手くいかないでいる。
しかしながら全く進歩が無いのではなく、少しずつではあったが成果は出ている様な感じはする。
実際のところ最初は一枚だけしか現れなかった羽だが、今は5枚ほど現れるようになった。
その一方でラナナとはいうと、食事が終わっても敷物の上から立ち上がることは無かった。
ただずっと休んでいるのではなく、彼女は彼女でその場で紙にメモを取りながら魔法の研究を行っていた。
「あーやっぱりここでつまづくんだよね」
光の羽を5枚だけ舞い落したところで、両手を腰に当ててため息交じりに呟く湖張。
「そこでドバっと魔法を放つ。そうすれば出来る」
湖張のそばでずっと見ていたウンバボがそう言うと、首を縦に振る湖張。
「そう、ここでそのドバっとが必要なのは分かるんだよね。
でもそれが中々難しくって。むしろアナタはよくこのタイミングでそんな事が出来るよね」
「ウンバボ、これでも天使。力業でどうにかしてしまう」
「力業かあ。・・・ねえレドベージュ。天使だから出来る魔法とかってあるの?」
湖張がレドベージュに問いかけると、彼は少し考える。
「ふむ・・・確かに天使だからこそという部分はあるのかもしれぬが・・・どうなのであろうな?
結局は魔法である事には変わらないのだ。
この魔法もウンバボが強い魔法の力を持っているから出来ているだけであって
天使だから出来るというわけでは無い。
実際のところ湖張もラナナも魔法に関して長けているから、決して二人には出来ないというわけでは無いと思うのだ」
「お前、僅か数時間でここまで出来るようになった。普通出来ない。
だからウンバボも二人なら出来ると思う。
でも難しいのも事実。ここで数週間頑張れば出来ると思う」
「そっかー」
レドベージュとウンバボの話を聞くなり腕を組んで考え込む湖張。
と、その時であった。今までずっと研究をを行っていたラナナは急に立ち上がり左手にメモを持ったまま、右手を前方にかざして魔法を放ち始める。
薄っすらと右の肘らへんに光が集まった後、右手から数枚の光の羽が放たれ始める。
そして右肘にあった光が手のひらまで移動をすると、数多くの光の羽が一気に解き放たれた。
「出来た!出来ましたよ湖張姉さま!!」
物凄く嬉しそうな顔を見せて湖張の方に振り返るラナナ。
「凄い!!え!?凄すぎない!?」
笑顔の混じった驚きの顔でラナナの下に駆け寄る湖張。
「やったー嬉しいですよ!これは難しかったです!」
「そうだよね、難しいのによくできたよね?」
「はい、普通の魔法ではありませんでしたからね。
天使の強力な魔力があればこそのような感じでした」
ラナナのその発言に首を小刻みに何度も縦に振る湖張。
「そうそうそう!途中で一気に魔法を放つところあるでしょ?あれは普通のやり方じゃ無理だよ」
「そうなんですよ。この魔法って途中にあり得ないくらいの魔力を解き放つ部分があるのですけれども、
普通にやると放出が間に合わないというか魔力を溜められないのですよね。
だから予めその時に必要な魔力を別の場所に溜めておいて、必要なタイミングでプールしていたその力を使う様に工夫したのですよ」
嬉しそうにやった事を解説するラナナ。それを聞くなり少し考えて一つ頷く湖張。
そして真正面に立ったままラナナの両手首をそっと掴んで笑顔を見せる。
「うん、最後の方がよく分からない。このまま魔法使って」
「まあ湖張姉さまはそっちの方が早いかもしれませんね」
そう言うなり魔法を放つラナナ。彼女の出した光の羽が湖張を包み込むと、湖張はそっと手を離す。
「オッケー、ありがとう。なるほどね・・・言っている意味が分かったわ」
そう言うなり右手を前方にかざす湖張。
そして一つ深呼吸をした後に魔法を放つ。
すると今度は彼女の右手から数えきれないほどの光の羽が放たれ始めた。
「やった!出来た!!」
「おめでとうございます!」
「いやーラナナのお陰だよ!!流石だね!」
「えへへー」
魔法を習得したことに喜びを感じ楽しそうにやり取りをする二人。
一方ウンバボはその姿を唖然として見ている。
「・・・信じられない。もう出来るようになった」
「ふむ、やはりこの二人には目を見張るものがあるな」
そう告げると二人に近づくレドベージュ。
「よくやったな二人とも。大したものだ」
「いやー難しかったよこれラナナ様様だね」
「とは言いますが、私だって完璧に習得したわけじゃありませんよ。
自分に出来るようにアレンジを加えましたから」
「でも効果は同じであろう。それは習得と言っても良かろうて」
レドベージュから習得という言葉を聞くと、ふと何かに気が付いた湖張。
それを解決するべくウンバボに話しかける。
「そう言えばこの魔法、何て名前なの?」
「そうですね、確かに魔法の名前を聞いていませんでした」
その言葉を聞くなりウンバボは湖張に顔を向けてポツリと呟くように答える。
「ウンバボの愛、そよ風に乗せて」
「・・・うん、良く聞こえなかった。
よしラナナ。この魔法はラナナのアレンジが加わった言わば別魔法だよ。
名前は私たちで決めよう」
「はい、そうしましょう。レディーフェにしましょう」
「良し決定、レディーフェに決定」
あまりにも認めたくない名前が出てきたので、緊急回避を行う二人。
ウンバボには悪いがどうしてもその名前は使いたくはなかった。
「・・・まあそれで良かろう。我としてもその名はどうかと思うからな」
レドベージュ的にもその名前は無しだったようだ。
当の本人であるウンバボの様子はというと、特に名前にこだわりが無かったのか、その流れになっても無表情のままである。
「とりあえず区切りが良さそう。今日はもうこれで終わりにするか?」
やはり特に何も思っていないようで、普通に接してくるウンバボ。するとレドベージュは頷いて代わりに答える。
「うむ、今日はもうこれで良かろう」
そう言うなりタオルを二人に渡すレドベージュ。
「先ほど転んだこともあり汚れたであろう。今日はもう風呂に入って終わりだ」
「いつも思うけど、このタオルは何処に仕込んでいるのよ?」
「まあ良いではないか」
「あーでも確かに疲れましたね。温泉行きましょう、湖張姉さま」
疲れながらも嬉しそうな顔を見せるラナナ。確かに温泉は楽しみではあったので、この提案は魅力的である。
「そうだね、時間も中途半端だしお風呂に行こうか」
そう言うなり敷物の片づけをし始める湖張。
ウンバボは自分がやると言うのであったが、首を横に振って片づけを続ける湖張であった。
<NEXT→>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十三話【温泉での一時】
<←PREV>
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十一話【穴をくぐると】
-
前の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十一話【穴をくぐると】 2021.02.06
-
次の記事
ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第七十三話【温泉での一時】 2021.02.07