ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第六十八話【観光で息抜き】
- 2021.01.12
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「わーー!湖張姉さま!?どうしよう!?引いてる!魚!魚!!」
「あー!竿を振らないで!落ち着いて!!」
陽気な旅人と別れてからは高台から湖の絶景を見たり、洞窟を探検したりと観光を満喫していた。
最初のうちは機嫌が悪かったラナナではあったが、すぐに楽しそうになり湖張はホッとしていた。
そして今は湖に伸びている桟橋から釣りをしている最中である。
ラナナは釣りをしたことが無かった中での初ヒットなので大騒ぎをしている。
「どうしよう!釣れない!釣れない!」
「竿を上げるんじゃなくって、後ろ斜めに引く感じにして!」
「そうだ!魔法で雷撃をここに落とせば魚が気絶するはず!」
「だめー!!」
周囲の釣り人をそっちのけで騒ぐ二人。
観光地に用意された観光用の釣り場なのでそれも許されている雰囲気なのがせめてもの救いである。
「つれたー!」
やっとの思いで魚を釣り上げられたので満面の笑みを見せるラナナ。
それを見て苦笑いの湖張。ただラナナがご機嫌なのでそれで良いかと素直に感じる。
「・・・ところでこれ、どうやって取れば良いのですか?」
釣り糸にぶらりと垂れ下がった魚を見て恐る恐る湖張に聞くラナナ。
「あー・・・あはははは」
どうやらその後の対処も戸惑っているらしい。
それもそうかと思いながら湖張は手際よく釣り針から魚を外すと水桶に魚を入れる。
「さてと、ここで釣った魚は食堂で料理してくれるらしいから私も頑張って釣らないとね。
今日はこれを晩御飯にしよう!」
「分かりました!頑張ります!」
一匹釣り終わり落ち着いたのか口調が戻ったラナナは湖張の隣に座り、再び釣りを再開する。
そんなこんなで夕方近くまで釣りを二人は楽しみ、その傍らで穏やかにレドベージュは二人を見守っていた。
日が暮れて夜になると、釣った魚が見事な料理になってテーブルに並べられた。
大漁とまではいかなかったが、二人で食べるには十分な量である。
何より釣り自体が純粋に楽しかったことが最高の気分転換であった。
「うわ!美味しい!」
鮮度が高いこともあり、その美味しさに思わず大き目の声を出すラナナ。
「そうだね、これは美味しいわ。やっぱり鮮度は重要だね。変に味付けするより塩焼きにするだけでも良いかも」
「そうですね。でもこっちのフライも美味しそうですよ」
「うん、たくさん食べてね」
楽しそうに食事をとる二人。この時ばかりは食事をしないレドベージュに少し申し訳なさを感じる。
しかし当の本にであるレドベージュは心なしかにこやかな気がした。
「何かごめんねレドベージュ。楽しんでいるの私たちだけみたいな感じだよ」
申し訳なさそうに湖張はそう言うと、ゆっくりと首を横に振るレドベージュ。
「いや、気にする事は無いぞ。我は二人が機嫌よく楽しんでいてくれれば満足ではある。むしろもっと楽しんで欲しい」
「そうなの?」
「そうさ」
「ふーん」
良く分からない様な素振りを見せる湖張。するとラナナはジッとレドベージュを見つめてから
ポツリと話す。
「そう言えば私のお父さんも同じような事いっていましたね。
私が喜んでいる姿を見ているだけで満足だって」
「ラナナのお父さんが?」
「はい。私が小さい頃にお菓子を貰って一人で食べていたんですよね。
それをお父さんは近くで見ているだけだったのですよ。
そしてその時、ひょっとしたらお父さんもお菓子を食べたいのかなと思って少し渡そうとしたら
いらないと言われたのですよね。それでさっき言ったようなことを言われたのですよ」
「そうなんだ。それじゃあレドベージュも父性に目覚めちゃったってところかな?」
ラナナの話を聞いた後、冗談交じりでからかうような笑顔でそう言いながらレドベージュに顔を向ける湖張。
すると彼は驚いたような雰囲気を一瞬見せたような気がした。
「・・・父親か」
そう一言だけ呟くレドベージュ。その雰囲気が不思議だったので思わずジッと見つめてしまう湖張とラナナ。
そして数秒後に二人の視線に気が付くと、話題を変えるように話をし始めるレドベージュ。
「さて、明日だがもう少し遊んでいくか?船で湖を一周というイベントもあるようだぞ?」
「船ですか?」
「うむ、その他もまだ色々とイベントが開かれるらしい」
レドベージュの提案を聞くと少し考えた後に湖張に話しかけるラナナ。
「どうしましょう?湖張姉さまは何処か行きたいところあります?」
「私?そうだね、今日は十分楽しんだからコレと言っては無いけど・・・
そう言えばレドベージュ、次の目的地はどうするの?
それによっては買い物をしたいかも」
特に行きたいところは無かったので、レドベージュにそう尋ねる湖張。
すると彼は湖張からラナナへ視線を移した後に西側の窓を見る。
「うむ、実はここから少し西に行った然程遠くない山の中に天の関連施設があるのだ」
「天の関連施設・・・ですか?」
予想だにしなかった単語が出てきたので静かに驚いた表情を見せながら質問をするラナナ。
「うむ、実はこの世界のいたるところに天の者が携わった施設がいくつもあってな。
というのも湖張やラナナのように天の為に地上で行動している者や、何かしらの理由で天の者と関わる人間はいつの時代も存在するのだ。
しかしその者達だって生きているのだ。病気や怪我をしたり、その他誰かの協力が必要な場面が出てくるであろう?
その時の為に天に関わる者が自由に立ち寄れ頼ることが出来る場所が必要と言うわけだ」
「それがこの近くにあるという事?」
湖張がそう質問をすると、レドベージュは軽く頷く。
「うむ、その通りだ。そしてその場所なのだが休める場所ではあるのだが、本来の目的は修練場なのだ。
そこで修練を積む事で力を付けた物は少なくはない」
「修練場?あの軽いノリの人が言っていたのって本当だったの!?」
驚いた表情を見せる二人。湖張が大き目の声でそう聞くとレドベージュは静かに頷く。
「うむ、実はそうなのだ。本来は普通の人間は知る由もない場所なのだが、何かの言い伝えに残っていたのであろう。
それでだ。そこならば少々無茶な修練ではあるのだが、強くなれる可能性もある。行ってみるか?
それをする事でひょっとしたらあの硬い魔物に対抗する術も見つけられるかもしれん」
レドベージュから思いも寄らない事を提案されたので、どうするか確認しあうかのようにお互いを見つめる湖張とラナナ。
「えっとどうしようか?」
「どうします?」
「・・・個人的には行きたいかな?丁度あの硬い魔物に対抗する術を見つけられないでいたから、解決の糸口になりそうなことは何でも試したいんだよね」
「じゃあ行きましょう」
湖張の話を聞くなり、即座に了承するラナナ。そのあっさりとした流れにキョトンとしてしまう。
「あれ?良いの?」
「良いですよ?だって今日は十分楽しんだじゃないですか。それに私だってもう少し力を付けた方が良いとも思っていますし、
何より天の施設に行けるなんて・・・こんなチャンス逃す手はありませんよ」
話しているうちに爽やかな笑顔から不敵な笑みに変わっていくラナナ。彼女にとって修練場は知的興味が惹かれる場所らしい。
「えっと、じゃあ明日はそこに行くことで良い?レドベージュ」
湖張がそうまとめると、彼はゆっくりと頷く。
「うむ、ではそうするとしよう。そこには必要な物がそろっているから特に何かを準備して持っていく必要はないぞ。
洞窟の中なのだが、まあ景色以外は居心地は良いはずだ」
「そうなのですか?」
「うむ。・・・まあ二人とも、がんばるのだぞ」
「うん?」
レドベージュの言葉に少し違和感を感じた湖張が不思議そうな顔を見せるが、彼はそれに気付いていないのか追加の言葉を出さなかった。
「えっと、じゃあ明日の為に今はこの魚を食べて元気を付けなきゃですね!」
ラナナはそう言うと、目の前にある魚の揚げ物を美味しそうに食べ始める。
その姿を見ると、先ほど感じた違和感もあまり気にならなくなってきたので、湖張も美味しい夕食の続きを楽しむことにした。
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