ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第五十九話【石造りの魔法生物を倒して】
- 2020.11.22
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
「勝ったよね?」
湖張がゆっくりと姿勢を戻しながらそう呟くと、歩いて近寄ってきたレドベージュが答える。
「うむ、物凄い量の魔力が放出されている。恐らくもう魔法生物として成り立つことは出来まい」
「湖張姉さま!」
後ろから飛んできたラナナは湖張の背中に左手を回して横に並び、嬉しそうな顔を見せながら魔法生物を観察する。
「やった!やりましたね!!凄いですよあんなに硬かった相手なのにこんな風に出来るなんて!」
隣で喜ぶラナナであったが、それとは対照的に湖張は意外と冷静な雰囲気で小さく笑顔を見せる。
「いや、私は大したことないよ。
この覇王の団扇が凄いだけ。
それにラナナの作戦と強力な魔法でヒビを入れてくれたことと、
レドベージュが足を砕いて、相手をいい位置で動けなくしてくれたから倒せたんだよ。
だからこれは二人がいたからこその勝利だよ」
「・・・謙虚ですね」
自分は飛び上がるように嬉しい気持ちであったのだが、湖張があまりにも冷静だったので高揚を抑え込むラナナ。
そしてそのタイミングで左手を胸に当てる湖張。
(まただ、何かが破裂しそうな感じがする)
そう感じていると剣をしまいながらレドベージュは湖張の目の前に立ち話しかけてくる。
「驕らない姿勢は良い点ではあるな。
だがあまり謙遜しなくても良いのだぞ。
その団扇の切れ味は使う者の技量に大きく作用される。
それは湖張も知っているであろう?人によってはただの団扇にしかならない物だ。
湖張だからあの硬い魔法生物を斬ることが出来たのだ。誇りに思って良い」
その言葉を聞くと、湖張は団扇をじっと見つめる。
「そう言えば今日は思い切り斬ろうと渾身の力を込めてやったんだよね。
そうしたら前に戦った芋を掘る硬い魔物の時よりも鋭く斬れた手応えだったよ。
やっぱり使い方によって切れ味が変わってくるんだね」
「うむ、その通りだ」
「そう、だからもっと喜びましょうよ!何か私だけ喜んで虚しいです」
再び嬉しそうな顔を見せるラナナ。するとそれに付き合う様に笑顔を見せる湖張。
「そっか、そうだよね。うん、私も良くやった!
色々個人的には反省もあるけど、まあいっか。今日は帰って良い物を食べよう!」
二人に心配を掛けたくなかったので、呼吸を整え破裂しそうな何かを抑え込むようにして元気な様子を見せる湖張。
(あれ?そう言えば前に何かが破裂しそうになった時も覇王の団扇を思い切り振った時だ。ひょっとして何か関連性がある?)
ふとその考えが頭をよぎると一瞬固まる湖張。しかし今は再び二人に気を使わせるのも忍びないので後で考える事にし、
明るく振舞うのを再開する事にした。
「うむ、それで良い」
彼女の笑顔を見ると、レドベージュはにこやかな雰囲気で頷く。
そして魔法生物に近づき、周囲に飛び散った破片を一つ手に取る。
「何をしているのですか?」
不思議そうにのぞき込むラナナ。
「うむ、魔法生物を倒したのは良いのだが、出自が気になってな。
なのでサンプルを回収しておこうと思う。今後、何か分かるかもしれないからな」
「なるほど、確かにそうかもしれませんね」
「そう言うなりラナナも破片を手に取ってジッと見つめる]
「何か分かる?」
湖張がそう問いかけるが、首を横に振るラナナ。
「いえ、残念ながら直ぐには分かりません。ですが、今こうして破片だけを持つと、粉が手に残るんですよね」
「粉?」
「そう、それはこういう事が言えるかもしれません」
そう言うなり倒れている魔法生物の前に立って手をかざすラナナ。
「えい!」
右手から小さな光の弾を放つと、魔法生物の残骸に命中し、一部分が欠けて飛び散る。
「やっぱり。・・・さっきまでは全く効かなかった魔法ですが、今はこの様に容易に傷つける事ができます。
つまりこの魔法生物はとても硬い材質で作られていたのではなく、
魔法によって硬くされていた可能性が高いですね。
今は半分にされて魔法が放出されてしまったので、硬くなれないと考えられます」
「・・・誰がこんなものを作ったのかな?」
「どうでしょう。それは流石に分かりませんね」
「だが今後、これに繋がる何かに出くわすのかもしれない。その時の為に今はサンプルを回収しておこう」
レドベージュがそう言うと、頷く二人。
「そうだね、これから同様のケースに遭遇した場合、同じものか比較が出来るもんね」
「うむ、ではそろそろ戻るか。今日は疲れたであろう?」
「はい、今日は早めに休みましょう。緊張感もありましたので疲れました」
「そういえばさ、町の人たちには魔法生物を倒したことは伝える?堀が無駄になっちゃうかもしれないけど」
湖張がそう聞くと、首を横に振るレドベージュ。
「いや、伝えなくて良いかもしれぬ。堀の工事は途中なのだが、今後の事も考えて守りを固める事は悪い事ではない。
今後は襲われることが無いだろうが、他の脅威が襲来する可能性はゼロでは無い。備えをしっかりとしてもらった方が良いであろう」
「そっか。分かった。それにまたここでも石像を作られたら困っちゃうもんね」
苦笑いでそう答える湖張。そして一行は、堀の工事が進んでいる町に戻る事にした。
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