ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第五十六話【堀の準備をする町】
- 2020.11.05
- ピースキーパー赤き聖者
- PeaceKeeper赤き聖者, 小説
鶏型の魔物を倒してから更に三日、一行はとある町にたどり着いていた。
既に信仰が篤い地域に入っていたようで、天標の信者も数多く存在しているようである。
そう感じた理由として、この数日間に立ち寄ったどこの村でも天標を深く信仰していたからだ。
またメーサ教の気配は全くと言って良い程に感じられなかったので、どうやらこの付近には進出をしていないようであるとも感じ取られた。
「この町にも多分メーサ教は入ってきていないのかな?」
町の入り口にそびえ立つ大きな門を見上げながら湖張がそう言うと、頷いて反応をするレドベージュ。
「うむ、恐らくはそうであろうな。ここに来るまでにメーサ教の気配は全くと言っていい程無かった。
やはり改宗させる事は容易ではない考えているのかもしれぬ」
「でもまあ一応町の中に入って本当に入ってきていないのかを確認しないとね。
・・・それにしても町は工事中?」
そう言いながら、周囲を見渡す湖張。
というのも大勢の人間が町の外壁に沿って深い溝を掘っているのである。
「これはお堀でしょうか?」
「お堀?これから戦でも起こるとでも言うの?」
ラナナが作っているものを堀と分析すると、腕を組みながら物騒な事を想像する湖張。
「その発想は穏やかでは無いな。だが、何かから守ろうとしているのかもしれぬな」
「とりあえず町に入って聞いてみようか?」
「そうですね、ここまで大々的に工事をしているのでしたら秘密にしているというわけではないので簡単に教えてくれそうです」
そう決まると工事している人々を横目に見ながら町に入る一行。
本日の天気は曇りで、今にでも一降りきそうな感じの空である。
工事の邪魔になるので雨は降らないで欲しいと湖張は思いながら、その場を離れていく。
町に入るなり、まずはその日の宿を取りに行くことにする。
そこを拠点として情報収集というわけだ。
町並みはレンガを積み上げられて建てられた家の間を石畳が敷き詰められた道が通っており、
とても綺麗に整備された雰囲気を感じ取ることが出来る。
またその様子から、この町の住人は建築の技術が高いのだろうとも思えてくる。
周囲を観察しながら町の中を進むと、頑丈そうな作りで3階建ての宿屋を見つけることが出来た。
本日の宿はここになりそうである。
金色の装飾を施された木製だが重厚感のある扉をゆっくりと開けると、
白い木材で作られた綺麗な床が広がっており、不思議と温かさを感じる見た目であった。
また、椅子やカウンター、そして内装までもが洒落ており一目で良い宿屋だという事を期待させてくれる。
カウンターには髭を生やした40前後の男性が立っており、笑顔で迎え入れてくれる。
「すみません、今日の宿をお願いしたいのですけれども大丈夫でしょうか?」
湖張がそう窺うと、男性は笑顔のままで快く答える。
「はい、大丈夫ですよ。一部屋にしますか?それとも・・・三部屋にしますか?」
レドベージュを少し見つめた後にそう尋ねてくる男性。
どうやら鎧を着た人間と思ったようだ。
「一部屋で良いですよ。あとこの赤い鎧は魔法で動く人形です。人じゃありませんよ」
苦笑いで答える湖張。すると笑顔と驚きの顔を混ぜた様子でレドベージュを見つめる男性。
この様な物珍しい目で見られることは慣れてきているので、特に焦る事は無くなってきた。
「これは失礼。そうしましたら二人分の料金になります。よろしいですか?」
「はい、お願いします。・・・ところで外で工事をしていたようなのですけれども、何を作っているのですか?」
宿を取り終えたついでに情報を集め始める湖張。すると男性は苦い顔をしながら腕を組んで答える。
「実はですね、ここ最近なのですが大型で石造りの魔法生物が彷徨い歩いていましてね。
誰が作ったのだかは分かりませんが、まあ迷惑な話ですよ。
それで一度、町にも入ってきてそこらじゅうを壊してしまったのです。
そして町人総出で追い出そうとしたのですが、まあ強くて大勢が怪我をしました。
最終的には衛兵が頑張ってくれたので何とか追い出す事は出来たのですが、また町に入ってこられては困ります。
そこで町の周囲に堀を作って侵入を防ごうという算段です。
「そんな事が・・・では今もここの近辺にその魔法生物はいるのですか?」
「ええ、きっといますよ。一昨日はここから少し離れた東の方での目撃例もあります」
話をしながら部屋の鍵をカウンターの上に置く男性。そしてそれを湖張は手に取る。
「分かりました、ありがとうございます」
そう言ってその場でのやり取りを終えると宿屋の男性は「気を付けてくださいね」と返して心配をしてくれた。
「部屋に入ると、少し広めな空間であることに気が付く。
机には白い花を生けてある花瓶が飾られており、
壁には優しい丘の風景画が飾られている。
ベッドも綺麗に整えられていて、部屋の片隅まで清掃が行き届いている様子が窺える。
また二人分でお願いした部屋なのだが、レドベージュがいたので広めの部屋を用意してくれたのかもしれない。
本日の宿も当たりの様である。
部屋に入るなり荷物を隅に置くと、外の空気を取り込むために窓を開けるラナナ。
「今回は魔法生物退治でしょうか?」
開いた窓を背にしてラナナがそう話しかけてくると、椅子に腰を掛けてから頷く湖張。
「まあそうなるよね。レドベージュはどう思う?」
視線を天将に向ける二人。
「そうだな、まあ知らない振りも出来まい」
「じゃあ決まりだね。でも一体どんな相手なのかな?」
「どうでしょうか。それに何故ここら辺にいるのかも疑問ですよね」
「確かにそうだよね。どうするべきかな?
・・・・とりあえずさ、今日はいきなり討伐に向かうのではなくって町で情報収集をしようか?
町の人に聞いても存在する理由は分からないだろうけど、追い返しているくらいだから特徴は分かると思うの。
この数日間で私たちの息は良い感じに合ってきてはいるから、
一歩進んだ訓練の一環として事前の情報無しでの戦闘も経験しておきたい気もするけど、今回は慎重に出た方が良い気もするんだよね」
湖張がそう意見を出すと、外を見るラナナ。視線の先には工事で使うであろう資材がある。
「そうですね、強くて町の中も壊したと聞きましたし、少し慎重に行動した方が良さそうですね」
「うむ、それが良かろう。それに今から出かけても、すぐに日が暮れてしまうだろう。
出発は明日だな」
レドベージュがそうまとめると、立ち上がる湖張。
「それじゃあ早速情報収集に向かおうか。何か良い情報が得られれば良いんだけどね」
「そうですね、それじゃあ行きましょうか」
そう言うと開けた窓を閉めるラナナ。換気はあまりできなかったが
掃除が行き届いており、特に空気が淀んでいたわけでもないので問題はない。
部屋に入ったばかりなのだが落ち着く間もなく、一行は情報収集の為に外に出かけるのであった。
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