ファンタジー小説「Peace Keeper 赤き聖者」第百七十一話【タウンからの増援】

           

「ハルザート殿、国の兵士が到着しましたよ!!」
村に入り、ハルザートの姿を見るなり大きな声をかけるメーサの騎士。今までに見せたことが無いくらいの声量だったので、気持ちが高ぶっている事が容易にわかる。

その声に反応をして視線を向けるハルザート。彼の傍らには右手に少年、左手に弟と手をつないでいる湖張の姿があった。
「兵士だ!!」
「こら、指を指さないの」

元気な少年を軽く窘めた後にハルザートに話しかける湖張。
「やっと来たね」
「ああ、これで攻勢に出られるな」
機嫌が良さそうな表情を見せるハルザート。彼的にも人手が足りなくて防戦一方だった現状を打開できることに期待を持てたが故の表情なのだろう。
その兵士たちは村に入るなり、村民に自らの事を説明し始めている。

「戻るなり大人気ですね」
湖張にべったりの兄弟を見つつ微苦笑のラナナ。彼女は村に入るなり湖張に向かって歩み寄ってきていた。
「ああ、四葉のツメーハを探しに行こうって誘われたばかりだよ」
「見つけたら幸運になれる葉っぱですね」
「そうそう」

「・・・そうなのか?」
二人の会話を聞いていたハルザートが不思議そうに問いかけてくる。
「うん?知らないの?」
逆に不思議そうな顔を見せる湖張。
「いや、ツメーハ自体は知ってはいるが・・・幸運になるかは聞いたことが無いな」

「ツメーハの葉は普通、3枚で構成されています。しかし稀に変異種が発生して4枚になる事があります。発生は1万本に1本くらいの確率ですので、その希少性から見つけられたら幸運と言われ始めた説が有力です。ただこの言い伝えはラガース王国だけですので世界共通という訳ではありませ・・・あー」

「あー」
「・・・そう言う事か」
ラナナが淡々とした解説をしている最中、何かを理解した様子を見せるなり、湖張とハルザートも納得をした素振りを見せる。

「そういえば元々、隣国出身と言っていましたね」
ラナナの言葉に頷くハルザート。そうこうしていると、今まで村人と話していた国の騎士が近づいてきて、ハルザートに向かって話しかけてくる。

「君がタウン殿に手紙を出したハルザート殿だな?」
友好的な雰囲気で話しかけてくる2本の剣を携えている騎士。年齢はタウンと同年代なのか、ハルザートよりは年上に見える。

「ああ、ハルザートだ。よろしく頼む」
ついこの間まで国の騎士に対して不信感を強く抱いていたのが嘘であったかのような柔らかい雰囲気で手を指し出すハルザート。今は国の支援を何度か受けていると聞いてはいたが、それは信頼を勝ち取るくらいの手厚いものだったのかというのが窺える。それか彼自身が元々は素直な性格で、頑なではないのかもしれない。どちらにせよ以前の険悪さが無いことは良いことだと思える。

しかしそのようなハルザートの差し出した手であったが、すぐには握手まではたどり着かなかった。というのも先ほどまで友好的だった騎士は少し考える間を持つ。そして不思議そうな顔で問いかけてくる。

「本当はここで名乗りたいところなのだが、実はタウン殿から自己紹介の時に不思議な名を告げるようにと言われていてね」
「どういうことだ?」
疑問符のハルザート。それを見て「まあ良いか」といった雰囲気で手を差し出す騎士。

「にせタウンだ。よろしくな」

「・・・な!?」
驚きと赤面のハルザート。タウンの家で過ごした夕食会の時に判明した勘違いが頭を過る。ハルザートが北の村で出会ったぬいぐるみを持った少女を救った騎士が、おそらくは目の前の騎士なのであろう。タウンのいたずら心が窺える。

「ぶっふー」
おちょくるような目つきと笑みで、噴き出す擬音を真似るラナナ。苦笑いの湖張。
そんな三人の様子に不思議そうな騎士。

「やはり何か理由があるんだな?タウン殿も人が悪い」
何事も無かったかのように騎士の手を握り握手を交わすハルザート。

「何でもない。貴殿の活躍を過去に聞いたことがあるだけだ」
「そうか、まあ良い。それより現状を聞いて良いか?」
特に深くは追求せずに早速仕事の話に入る騎士。タウンの悪ふざけは無かった事にしており真面目そうである。
その流れのままハルザートは彼をあずまやへ案内しようとした。

しかしその時であった。自分たちがいる位置とは逆側の村の出入り口方向が騒がしくなってくる。

「何かあったのかな?」
その方角に視線を移す湖張。すると村人が慌てて走ってくる。
「トカゲの魔物が出た!!」

「え?またですか?!」
驚きの表情を見せるラナナ。先ほど退治したばかりだというのに、再びの襲来だったので当然ではある。
「分かった、対処しよう」
行動に移ろうとするハルザート。すると彼の腕を二刀流の騎士が掴んで制止させる。
そして一歩前に出て伝えてくる。

「ここは我々に任せてもらおう。敵の分析もしたい」
「良いのか?」
「そのために来たんだ。少数だが精鋭だ」

小さく笑顔を見せるなり兵士たちに号令をかける二刀流の騎士。
「行くぞ!」

その言葉の後に走り出す国の兵士たち。湖張たちは様子が気になるので彼らの後について行くことにした。

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