湖張が少し落ち着きを取り戻した後、一行は深雪と別れた町に戻る事にした。距離的に一番近かったからである。 昼前の到着とはなったが、何処にいくわけでも、何をするわけでもなく、宿の部屋でただ時間を費やすだけであった。 部屋の端にあるベッドの上で壁に力なく寄り掛かって座っている湖張。目の下を腫らしながら今までの事を思い返している。そんな彼女に少し離れたテーブルの位置から優しく声をかけるラナナ。 「お茶を淹 […]
「村の状況を確認しろ!誰か生存者が残っている可能性を捨てきるな!!」 兵士たちに指示を出す二刀流の騎士。魔物は討伐したものの、すぐさま事後処理に移る。 その一方で力なく地面に座っている湖張に近寄り、心配そうに声をかけようとするハルザート。しかし目の前で起きた事、少年の事を思うと何と言って良いのか、どう接すれば良いのか分からず思わず数メートル先で立ち止まってしまう。 「湖張、怪我は無いか?」 ハルザ […]
一夜明けて、新しい朝が始まる。曇り空ではあったが、雨の心配はなさそうではあった。その日は朝から魔物の調査に出る事が村中に伝わっており、朝食の支度や見送りの準備で村全体の動きも早かった。 ラナナはその様子を見ながら困った笑顔で湖張に話しかける。 「ちょっと周囲を調査しに行くだけなのに、大事になっていますね。お祭りの準備みたいですよ」 「そうだね。でもそれだけ魔物が居なくなる生活を期待しているんじゃな […]
新たに出現した黒い異形の魔物を倒した後は、村人たちから今まで以上の歓声を浴びた一行。湖張の技によって文字通り腰を抜かされたが、少年の一声から村人たちも賞賛の姿勢に切り替わっていった。 今は夕暮れ時に差し掛かっていて村は普段通りの落ち着いた様子を取り戻しており、湖張たちは宿屋の二階にある滞在中の部屋で寛ぎながら会話をしている。 内容はラナナが本日メーサの騎士より得た情報であった。 「・・・という事で […]
村の反対側に駆け付けると、村を出てから20メートルほど離れた位置に4匹の皮膚が硬い魔物が出現していた。ただ村に向かってきているわけでは無く、純粋に近くをうろついているだけという雰囲気である。 その様子を確認するとハルザートに話しかける二刀流の騎士。 「固いんだよな、あれ」 「ああ、大丈夫か?」 「問題ない」 簡単にやり取りを終わらせると、兵士たちに様子を確認する。全員準備が整った雰囲気である。 「 […]
「ハルザート殿、国の兵士が到着しましたよ!!」 村に入り、ハルザートの姿を見るなり大きな声をかけるメーサの騎士。今までに見せたことが無いくらいの声量だったので、気持ちが高ぶっている事が容易にわかる。 その声に反応をして視線を向けるハルザート。彼の傍らには右手に少年、左手に弟と手をつないでいる湖張の姿があった。 「兵士だ!!」 「こら、指を指さないの」 元気な少年を軽く窘めた後にハルザートに話しかけ […]
臨戦態勢になり、身構えている皮膚が硬い魔物。それに向かってメーサ教の騎士は勇敢な声を上げながら槍を構えて突進をする。 「うおおおお!」 渾身の力で槍を突き出すと、皮膚が硬い魔物を一撃で仕留める騎士。 そしてすぐさま突き刺した槍を引き抜くと、近くにいる次の標的に攻撃を仕掛ける。 (あっちは大丈夫そうだね) 視線を騎士に向けながら心の中で呟く湖張。 現在彼女は村のすぐ外で魔物と交戦をしている。 元々は […]
「あれ?もう姿が無いですね?」 少し慌てる様子で周囲を見渡すラナナ。レドベージュは茂みの方を見つめている。 現在は先ほど皮膚の硬い魔物を討伐した池のほとりに戻ってきており、黒い異形の魔物と遭遇出来ないかと期待をしていたのだが、既に捕食された後の様子であった。 「それにしても、こんなに跡形もなく綺麗に食べられるものなのでしょうか?しかも速いですよね?」 現状に懐疑的なラナナがそう呟く。 「確かに奇妙 […]
「姉ちゃん、俺に技を教えてよ!」 昼食中に元気よく湖張に申し出てくる少年。予想だにしなかった突然の事に、当然のように提供されたパンを食べる手が止まる。 「・・・うん?」 僅かな焦りからか、首を傾げて変な笑顔を見せる湖張。現在は打ち合わせの流れのまま、あずまやにて昼休憩の最中であった。少年も一緒に食べるといって湖張の隣に座って食べていたのだが、何の前ぶりも無くキラキラと輝いた眼で訴えてくる。 「あり […]
村に入ると、すぐさまちょっとした広場の中心に位置する赤い屋根と四隅の柱だけで構成された、あずまやが目に入ってくる。 中心には8人ほどが利用できる大きな四角い木製のテーブルと、2人でゆったりと利用できるほどの横に長い椅子が設置されている。 心地よい風と村の雰囲気を感じながら休憩ができる場のようだ。 あずまやの前まで到達すると、ハルザートは湖張たちに話しかける。 「ここで話をするとしよう。気軽に利用し […]