「あれ?もう姿が無いですね?」 少し慌てる様子で周囲を見渡すラナナ。レドベージュは茂みの方を見つめている。 現在は先ほど皮膚の硬い魔物を討伐した池のほとりに戻ってきており、黒い異形の魔物と遭遇出来ないかと期待をしていたのだが、既に捕食された後の様子であった。 「それにしても、こんなに跡形もなく綺麗に食べられるものなのでしょうか?しかも速いですよね?」 現状に懐疑的なラナナがそう呟く。 「確かに奇妙 […]
「姉ちゃん、俺に技を教えてよ!」 昼食中に元気よく湖張に申し出てくる少年。予想だにしなかった突然の事に、当然のように提供されたパンを食べる手が止まる。 「・・・うん?」 僅かな焦りからか、首を傾げて変な笑顔を見せる湖張。現在は打ち合わせの流れのまま、あずまやにて昼休憩の最中であった。少年も一緒に食べるといって湖張の隣に座って食べていたのだが、何の前ぶりも無くキラキラと輝いた眼で訴えてくる。 「あり […]
村に入ると、すぐさまちょっとした広場の中心に位置する赤い屋根と四隅の柱だけで構成された、あずまやが目に入ってくる。 中心には8人ほどが利用できる大きな四角い木製のテーブルと、2人でゆったりと利用できるほどの横に長い椅子が設置されている。 心地よい風と村の雰囲気を感じながら休憩ができる場のようだ。 あずまやの前まで到達すると、ハルザートは湖張たちに話しかける。 「ここで話をするとしよう。気軽に利用し […]
深雪と別れてから1時間後、一行は身支度を早々に終えて情報のあった村へ向かった。 村はそこまで遠いわけではなく、2時間も歩けば到着する位置であった。しかしながら木々が生い茂った山の上なので坂道を上る必要があり、一苦労でもあった。 現在、湖張たちは山道から少し外れたところで茂みの奥をジッと見つめている。その先にはちょっとした池があり、背の低い草が所々に生えている広いほとりがある。 そしてそこには皮膚の […]
一夜明け、朝食を済ませ宿の部屋に集まっている四人。深雪は身支度を済ませようとしている。 あれからというもの、深雪は慎ましく過ごしていた。 昨夜、夕食を食べ終わった頃にはすっかり友好的になっており、色々と話しを聞くことが出来た。 やはり遠くまで一人旅をしてきた事は大変だったようで、少し追い詰められていた様子であった。そして湖張との手合わせが切っ掛けなのに、何で自分がこんなにも苦労をして旅をしているの […]
フワッとした感覚の中、ゆっくりと瞼を開けると見たことが無い天井が映る。 一瞬、理解が出来なかった様子だが、すぐさま何かに気が付いた様子で勢いよく上半身を起こす深雪。 「ふむ、目覚めたようだな」 焦ったような表情で声の方向に顔を向ける深雪。そこには看病をしていたレドベージュの姿があった。 「鎧が・・・しゃべった?」 「驚かせてしまったな」 「面妖な!!」 「この反応、慣れてはいるつもりではあるが・・ […]
慌ただしい流れで師と別れを告げると、一行は日が暮れないうちに更に西の町を目指す事となった。 最後にゆっくり食事でもという思いはあったものの、今のダラに感づかれる事の危険性を考えると、悠長なことは言っていられなかった。 「日暮れまでに間に合うかな?」 空を見上げながら問いかける湖張。 「うむ、夕暮れ時に到着であろうな。問題なかろう」 「そっか。まあ最悪、魔法で飛べば良いよね?」 「うむ、そうではある […]
「それではいきます!」 師の部屋にて湖張に向けて手をかざすラナナ。 今は滞在2日目の昼過ぎ。宣言通り二日目でアルサキエナの習得を終えたラナナ。 成果を試すために湖張に向かってアルサキエナを放とうとしている。 「はいはいどうぞ」 特に警戒もせずに腕を広げて受け入れる姿勢の湖張。 「アルサキエナ!」 水色の細い光の線が何本も緩やかな螺旋を描くようにラナナの手から放たれると、湖張の体にすっと吸い込まれて […]
現在は昼前の時間帯。湖張は一人、学食の大きなテーブルに座っている。もうしばらくすると昼休みに入った多くの学生たちが訪れる事もあり、少し早い昼食を取っていた。 ラナナが師と再開をしてから既に1日が経過している。彼女は話が終わった後、すぐにアルサキエナの習得に専念し始める。湖張は邪魔をしてはいけないと思い、町を散策したり人気が無い場所で鍛錬をしたりと、一人の時間を過ごしていた。 「相席、よろしいですか […]
何と返して良いのか迷いながらも、言葉を発するラナナ。 「はい。ですが・・・」 「赤き聖者として必要な力だった。ですよね?」 自らの言い分を伝える前に師の目の勢いが少し弱くなり、理解を示すような雰囲気になると、ラナナは簡単な答えだけを返す。 「・・・はい」 そこで持ったままの手紙に目を移す師。そしてもう一度読み直す間を取った後に伝える。 「失礼、少し見た目が騒がしくなります」 頭の高さより少し上の位 […]